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しかし、昨年も一昨年も正規の手続きのみで入札に挑んだ東町が一位で、本町が二位であったのだ。
では、裏取引で一位を獲得するためには、幾らの金が必要なのか――。
得てして思案したのち、偉進は席を立った。
「旦那様。お帰りになられるので?」
廊下を進んでいると、せわしなく後を追ってきた佐吉が背中で訊いた。
「やむを得ぬだろう。西町は三百。西中町は五百。
裏取引は金だけが物を言うのだ。西中町と同額の五百を揃えても一位を獲得出来るとは思えん。商団の皆に不利益は被せられんからな」
「確かに、五百を差し上げても二位しか獲得出来ぬなら、正規の手続きで二位を獲得するほうがよろしいですな。よう決断なさいました」
最後の言葉は、佐吉なりの気遣いであろう。
ここまで来たのに打つ手が無いとは、口惜しくて仕方がなかった。
自信に満ちた松若旦那の顔を思い浮かべると、はらわたがねじきれそうなほど怒りが沸いてくる。
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