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松若旦那はやり方が汚ないのだ。
偉進はまだ松若旦那と取引をしたことは無いが、それをしていた偉進の祖父がよく頭を抱えていた。
薬商は客が望む薬材が不足したとき、他の薬店からそれを譲ってもらうことがよくあるのだが、祖父は松若旦那に言いくるめられ安値で薬材を譲り、さらに松若旦那はそれを高値で客に売ったというのだ。
しかも、これは一度や二度の出来事では無かったらしい。
偉進は早く見世に戻り、次の対策を立てねばと考えていた。
しかし、領府の屋敷を出ようとしたとき、領府の書記らしき男に呼び止められた。
流石、重臣に仕える書記だけあって、小安より遥かによい着物を召している。
「なんだ」
「お帰りになられるのでしたら、ここへ商団名をご記入ください」
「それは何故だ」
「誰が訪ねて来られたのか領府様にご報告せねばなりません」
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