第13話

8/37
前へ
/37ページ
次へ
審議に関わる重要人物は、右府と左府に次ぐ重臣、領府であった。 偉進は天印金百両を持し、ただちに領府の屋敷を訪ねた。 しかしそこで驚いたのは、待機部屋として通された間が、商人でぎっしりと埋まっていたことである。 「皆、賄賂を持ってきたんでしょうか」 と、その有りようを見た佐吉が偉進に小声で訊ねたが、偉進はそれしかなかろうと思った。 思わず失笑がこみあげた。 無駄足かも知れぬという思いで父を訪ねたのに、父はあっけらかんと領府の名を口にしたのだ。審議に関わる重要人物が知られることなど、さほど問題ではないのであろう。要は、賄賂を送っても便宜がはかられるかどうか、というのが最大の難点なのである。 偉進は父の言葉を思い出していた。 「賄賂を贈り、よい返事をいただけねば、入札でいかに有利な条件を提示しようと、五商団にも選ばれぬぞ。それでも行くのか」
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

140人が本棚に入れています
本棚に追加