第14話

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しかして、この結果にいちばん疑念を抱いたのが、一部始終を見ていた領議の書記である。 書記は偉進の顔を覚えていた。 天地がひるがえろうと、偉進が所属する商団の獲得は無いと思っていた。 しかし今、偉進は双拳を天に突き立て、歓喜の声をあげている。 書記は背負っていた袋を降ろし、名簿を出した。 確かに壱百両と記されていた筈――。 そんな思いで名簿をくり、ようやく目当ての項を見つけたとき、思わず己の浅さに笑いが込み上げた。 “東町商 壱百両” 書記は、記入された文字を疑いもせず領議に見せたのだ。 かような単純な手に騙されたというのに、久々に笑ったからか、不思議と爽快感があった。
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