第14話

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*** 南の間は、客と商人の笑声で賑わっている。 祝詞の訪れが一先ず止むと、偉進は銀の箸を掴み、蒸した家鴨に胡麻味噌を塗ったものを口に入れた。 胡麻味噌には、細かく砕かれた巴旦杏(はたんきょう)が混ぜられており、これは料理長自慢の一品である。 「東町は二十一商団中、二十一位だ」 「二十一商団中と言うことは――」 「まあ、最下位だな」 あたかも、さも当然、というように、偉進は家鴨を次々と口に詰めている。 どうやら好みに合うらしい。 上品さの欠片もない――。 都季は呆れつつも、下座に目をやった。 末端の席で、毬子と松若旦那が口論している。声をひそめているが、仲違いしているのは一目瞭然である。 「都季」 偉進が箸を置いた。 「そろそろ披露してくれ」 呟いた口の端が笑んでいる。 座敷舞のことだと都季は直ぐに察した。
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