第14話

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およそ五十名の大宴席は、大広敷の南の間が使われることになり、そこまで妙児の先導で向かった。 都季の後ろに見世娘が続き、その後ろを娼妓が続いて歩く。 南の間に着くと、襖の前で妙児が振り返った。 南の間の襖は四枚で、中央の二枚にはお互いを睨みあう虎が凄まじい筆勢で描かれていた。襖の両隣には、開閉係として置かれた部屋付きが立っている。 この開閉係は、松若旦那に招かれた席では無かったことである。 大宴席であるが故の設置だろうか、と都季が思っていると、妙児が皆に低頭を命じた。 襖を開ける前から低頭とは、財力のある商団ばかりが集まっているからであろうか。 妙児は皆が低頭したことを確かめると、都季に「襖が開いたら、挨拶をしなさい」と耳打ちし、襖に向かって都季らの到着を告げた。 きびきびとした妙児の声に、身が引き締まる思いになったのは、皆も同じであろう。 開閉係が襖を開けた気配を感じとると、都季は臍のうえに重ねた自らの手を見つめつつ声を発した。
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