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「本日は、この場にお呼びいただき感謝いたします」
「うむ。面をあげよ」
偉進の声で一同背を伸ばすと、おもわず皆が驚倒して目を見張った。
上座に赤い官服の男が座している。
皇家役人――。
そう認めると娼妓は次々に畏まり、いまいちど低頭した。
しかし、都季は立ち尽くしていた。
「まあ、そう堅くなるな。みなに酒を注いでくれ」
くっくっと偉進が笑っている。
その偉進こそが、皇家役人のなりで中央にどかりと腰を据えていたのだ。
都季はまぼろしを見ているのかと思った。
娼妓らは深々と礼をすると、下女が運んできた銚子を各々持ち、酒を注ぎに回った。
毬子が松若旦那の姿を探している。
「都季。あんたは上座だろ。旦那が待ってるじゃないか」
ハナエが都季に囁き、銚子を手渡した。
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