第14話

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*** 今日、宮廷納品独占権の獲得商団が発表されたのは午前であった。 宮城の東南門をくぐったところに、宮内の食材、物品に関する業務を司る役所がある。 役所の門は、門扉のない屋根と門柱のみの牌楼(はいろう)で、偉進は梁に掲げられた内資府という文字を見て、大きく息を吸った。 先日、入札とともに提出した白檀は、二等品であった。目利きの優れている手代に厳選させ、なるべく上等品に近いものを提出したが、見世を出るとき手代に引き止められた。 「一見には判らぬでしょうが、東町が買い占めたのは最も香りを強く放つ心材部分です。勝ち目はございません」 確かに、昨年も一昨年も東町に敗れている。 偉進とともに内資府を訪れた本町の商団長、副商団長、以下二名は、祖父でさえも敗れたのだから当主についたばかりの其方が気に病むことはないと、既に諦めた顔で偉進を元気づけた。
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