144人が本棚に入れています
本棚に追加
牌楼をくぐると、若い官吏が出迎えた。
その者の案内で庭へと向かうと、一段高くなった東屋に、年配の官吏が立っていた。
他の商団は早くから東屋の前で待機していたらしく、朝の寒さに体を震わせている者が大勢いる。
「旦那様」
佐吉が偉進の耳元で囁いた。
「どうした」
「あちらをご覧ください」
目で方角を告げている。
偉進が首を回すと、敷地を囲んだ塀の前に領議の書記が一人で立っていた。
「発表を見に来たんだろう。暇な奴だな」
書記と目が合うと、偉進はあからさまに目を逸らした。
「商団はこれで揃ったか」
年配の官吏が問うた。
「揃いました」
年若の官吏が目礼した。
「では納品独占権を与える商団を発表する」
最初のコメントを投稿しよう!