第15話

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妙児は先ほどの宗加の料理は試食しなかったが、誰も食してやらぬのは哀れかと思い、落胆しつつ料理をさげた下女を廊下で呼び止めた。 「待ちなさい。それを一皿盛ってちょうだい」 下女が手にしている盆の上には、大鉢の傍らに味きき皿が十枚ほど重ねて置いてある。 「え……、妙児さんが食されるのですか」 「それが何か」 言ったとき、反対側の廊下から都季が歩いてきたのに気付いた。 都季の後ろを、部屋つきのセツが歩いている。 折しも、食房からハナエが顔を出した。 「ああ、都季。やっと来たか! もう料理は一品ずつ出ちまったよ」 大方、ハナエが都季を呼びにセツを遣わしたのであろう。今やって来たばかりの都季は、ハナエにこれまでの料理勝負の経緯を訊いている。 「妙児さん。どうぞ」 廊下に大鉢の乗った盆を置き、味きき皿へ“天豆と芋の焼き”を僅かに盛りつけた下女が、それを差し出した。
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