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これも上級女の感触はよく、大鉢で運ばれてきた余り物もあっという間に娼妓らが平らげてしまったのであった。
確かにシノの腕前では宗加に勝てぬであろう――。
妙児がそう確信したのは、しばし経て出されたシノの二品目がこれもまた昼餉や夕餉の向付けでよく目にする鮑の煮であったためだ。
「食す気になれないわ。吐き気がする」
綾はシノが膳に小鉢を置くと、あからさまに顔をそむけた。
確かに試食に値せぬ料理であるが、見た目はいつも通り一口大に切られたものが二切れ交差して重ねてある盛りつけ方で、火の通し加減にしても可否はない。
幾らなんでも言葉に度が過ぎまいか、と妙児が思っていたときであった。にわかに綾が口を押さえて体を丸めたのである。
「綾様。いかがされましたか!」
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