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掃除の具合を見に行くかと思いつつ妙児が土間へ降りたとき、ひとりの下女が妙児の眼前に立ちはだかった。
シノと同期の下女、宗加(そうか)である。
「妙児さん。何故シノひとりに茶芸を教えるのですか」
宗加は慎ましく微笑んだが、あわよくば指南を辞めさせてやろうと思慮しているのが、さかしらな眼の奥から感じとれた。
宗加はシノを快く思っていないのだ。
それは、二人が洗濯場から調理場担当へ同日異動したことにも拘泥しているであろう。
その異動令を出したのは妙児であった。
機転のきく宗加と何をするにも鈍いシノとでは、シノの持ち場格上げは妥当では無かったと思われるが、当時は調理場の人員不足を問題視していたため、それはやむを得ぬ措置であった。
しかし、宗加はそれを納得しないのだ。
愚鈍なシノと同額の給金であることが解せぬらしく「調理場にシノは要らない」と料理長に再三訴えているらしい。
女長の蓮吾でさえも人事に口は出さぬのに――。
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