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しかし、下女らの目は信用していない。首を傾げている者までいる。
「嘘だと思うなら、宗加とシノで料理勝負をしてみろ。誰しも分かる答えが出るぞ」
したり顔の料理長に、下女らはみな疑心を抱いた目を向けていたが、「勝負するわ」と発した宗加の声が、一同のささめきごとをぴしゃりと静めたのであった。
かくして決定した料理勝負は、細く長く生きることを望むシノにとって、とんだ厄難とも言えるべき行事となった訳であるが、ひとまずそれはさておき、実は料理長がこれを言い出したのは、勝率の大きい宗加に勝ち星を与えてやることで調理場に必要なのはお前だと言い聞かせる魂胆であったらしい。
「宗加が勝てば、お前を茶師にするのは惜しいと言ってやりゃあいい。まあ……、シノが勝てば誰も文句は言えんようになるんだがなあ……」
シノの腕前では宗加に勝てん、と料理長はため息混じりに妙児に耳打ちしたのであった。
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