141人が本棚に入れています
本棚に追加
料理勝負が行われたのは翌日である。
シノと宗加の料理を食べ比べ、どちらの料理が優れているか、八名の上級女に決めてもらうこととなった。
「料理の種類や数に制限はない。半刻のあいだに出来た料理をお出ししろ」
料理長の言葉を合図に、シノと宗加は各々作業台に向かった。
調理場には、この勝負を見守る下女らが大勢詰め寄った。
また上級女が控える食房も、暇をもて余した娼妓らの集まるところとなり、この料理勝負は見世娘試験以降、久々に雪美館全体が活気づいた大きな行事となったのである。
先ず食房に料理を持って現れたのは宗加であった。
上級女は入り口より最も遠いところに一番娼妓の秋月が座しており、末を綾という順で並列、箸だけが置かれた脚付き膳を前にしている。
宗加は上級女に一礼し、盆に乗せてきた小鉢を秋月から順に配った。
「天豆の煮です」
宗加が低頭すると、まず秋月が箸を取った。
最初のコメントを投稿しよう!