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教室に着くと、自分の席に着席する。
そして、ホームルームが始まるまで机の上で突っ伏して寝たふりを決めこもうとした時、
「おはようございます、御手洗君」
頭上から声。
顔を上げると、クラスメートの杏 静(あん しず)が話しかけてきた。
まあ、クラスの中で空気扱いされてる僕(ノリが悪い+無愛想+貧乏)に話しかけるのは、彼女くらいなものだ。
用件もおそらくは──
「その……新しいバイトがあるんだけど…………どうかな?」
姉と二人暮らしの僕を気遣ってか、こうして時々短期(と言ってもお手伝いレベルのだが)のバイトを紹介してくれる。
無論、そのバイトで得たお金は生活費にあてている。
「ありがたいけど……この前の迷子の犬の飼い主を捜すようなのは勘弁かな」
あれは重労働の割に報酬が安かった。
「う、ううん……今回はその、個人的にというか…」
「個人的…?杏さんが僕に依頼するっていうこと?」
僕がそう訊くと、コクコクと杏さんが頷く。
「今度……中間テストがあるでしょ?だから、御手洗君、成績良いし家庭教師頼もうと思って………ダメ、かな?」
「……ふむ?」
自慢じゃないが僕は前回の前期テストで学年四位をとっている。確かに勉強には自信があるし家庭教師も無理ではないが……
(杏さんも前期テストで学年五十位に入ってたような……?)
……まあ、いいか。
あまり変に勘ぐるのも杏さんに失礼だ。
「うん、いいよ杏さん。引き受けるよ……報酬は?」
「ありがとう!えっと……今週の土曜と日曜、私の家で朝十時から夜の九時まで……休憩一時間とお昼ご飯と夜ご飯付きで…に、二万円…………ど、どうかな?」
四食付いて、二日だけで二万……!?
お、美味しすぎて何か裏がないかと勘ぐってしまいそうだ。
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