第一章 「ゼロ」

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「遂にこの時が!」 その瞬間、部屋の電気が消える。他の家電もだ。 「……あれ?」 辺りを見渡すが真っ暗で何も見えない。 ジュリウスは不安に陥る。 何故なら、自分がゲームのスタートボタンを押したタイミングで真っ暗になったからである。 「もしかして……オレが原因?」 ポリエスで停電が起こるのは珍しいことである。 半永久的に安全でクリーンな電気を生み出すことが可能になってから一度も停電したことがない。 そんな珍しいことを自分が引き起こしてしまったと思うと恐ろしくなる。 すると一斉に電気が入る。 一安心するがやはり自分が原因なのだろうかと疑問になる。 突然家の呼び出し音が鳴る。 ジュリウスは急いで玄関に向かう。 (もしかして警察か?!) 恐る恐るドアを開けると上下ピンクでチェック柄の可愛らしいパジャマを着たエリナがいた。 お風呂から上がったばかりなのか髪の毛がまだ濡れており、ほのかにシャンプーのいい香りがする。 「エリナか…。」 とりあえず警察じゃなくて一安心だ。 「何よその言い方は!」 しかし、エリナに怒られてしまう。 彼女はお風呂に入っている途中に停電になったのだ。 ジュリウスは立ち話しもあれだと思い自分の部屋に彼女を入れる。      * ― 「お邪魔します。」 礼儀正しく言うと靴を脱ぎ、中に入る。 リビングに置かれている黒いテーブルのところに座るように指示する。 残念ながら部屋には椅子やソファーがない。 ほとんどゲームや携帯、食品などに使ってしまうからである。 台所で冷えた麦茶をコップに注ぎながら話す。 「もしかしたらオレが原因なのかもしれない…。」 「えっ?」 そのことについて事情を詳しく説明する。 するとエリナが麦茶を一口飲み、それを否定する。 「ジュリウスが原因だとは思わない。」 「いや、だってよ…あまりにタイミングが良すぎるし。」 首を横に振り、話しを始める。 「私ね、停電になった瞬間…なんか嫌な感じがしたの。」 「嫌な感じ…?」 首を縦に振り、うつ向きながら話しを続ける。 「なんて言っていいか分からないけど……なんか物凄く…。」 エリナの手が震えているのに気がつく。 彼女が感じた“嫌な感じ”はとてつもないものだと感じる。 何か災いが起きる前兆なのだろうか。      * ― 数十分後、エリナは自分の部屋に帰った。
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