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ゲームをしようとしたがどうもやる気が起きない。
エリナの言っていた言葉では言い表せない“嫌な感じ”が気になる。
ズボンのポケットからタッチ画面式の携帯電話を取り出し、ある人物に電話を掛ける。
「もしもし。」
「あっもしもし。久しぶりだねアルフレッド。」
「1年ぶりにその声を聞いたな。」
電話から聞こえてくる声は中年男性のような低い声だ。
“アルフレッド・タビス”。
格闘技を専門的に教えている人物。
過去に世界チャンピオンになったこともある凄腕だ。
実は幼い頃からジュリウスは彼の元で修業し、鍛えていた。
しかし、ポリエスに引っ越すと同時に修業に行かなくなったのだ。
「で…一体何の用だ?」
「また鍛えてほしい。」
それを聞いた瞬間、アルフレッドが鼻で笑う。
嬉しいのかそれとも馬鹿にしているのかは分からないが。
「いいだろう…。しかし、一週間に一回だけだ。」
「どうして?」
「オレの妻からもう格闘技は辞めろって言われてな。今は内緒でやっているんだ。」
一度会ったことがある。
髪が長くて凄く美人だ。それに優しい。
しかし、怒るとアルフレッドですら手に負えなくなる程凶暴になる。
「そ、そうなんだ…。」
凶暴になって彼を怒っている姿を想像して恐ろしくなる。
「まぁっ、そうゆうことだ。日にちが決まったら連絡する。」
そう言うと向こうから電話が切られる。
途中で修業を投げ出した自分に対して怒っているのだろうか。
そんなことを考えながら部屋の電気を消し、ベッドに入る。
*
― 気がついたら夢の世界にいた。
しかし、夢は“悪夢”だった。
自分の体が巨大な手に握られ、そのまま暗闇に引きずり込まれていく夢。
あまりの怖さに目が覚める。
変な汗が流れている。Tシャツも濡れている。
枕の隣に置いてある目覚まし時計で時間を確認する。
夜中の1時だ。
深いため息を吐くとベッドから降り、水を飲みに台所に行こうとする。
その時、外から何かを感じた。
不思議に思いながらカーテンを少し開け、隙間から外を見つめる。
狭い路地に入っていく三人組の男を見つける。
「こんな時間に…。」
完全に怪しい。
真夜中にあんな狭い路地に入っていくなんて…。
ジュリウスは玄関に向かう。
誰にもバレないようにゆっくりとドアを開け、外に出る。
やはり夜になると外は冷える。
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