第一章 「ゼロ」

11/21
前へ
/107ページ
次へ
ナイフの先をジュリウスに向けながら笑う。 「あははは!!人一人殺そうが何とも思わねぇーよ!!」 完全にぶちギレる。 拳を腕から血管が浮き出る程、力強く握る。 そして確信する。世界は歪んでいると。 「お喋りは終りだ。オレに殺されるのを光栄に思えー!!」 ナイフを構え、ジュリウスに切りかかる。 それを素早く避け、ナイフを持っている手首を思い切り手刀を喰らわせる。 男に激痛が走り、手からナイフを離してしまう。 その隙に怒りを込めた拳を顔面に当てる。 「あがぁ!!」 のけ反りながら地面に倒れる。 鼻の骨が折れ、鼻血が流れている。 「お前!!」 他の二人が拳銃を取り出し、少年に発砲する。 ジュリウスは素早く弾丸を避け、二人の持っている拳銃を蹴りで破壊する。 二人は恐怖で震える。 少年が“悪魔”に見えてしまう。 一人の男の首に回し蹴りをすると、素早くもう一人の男の顎をアッパーで砕く。 見事に三人を撃退する。 ポケットから携帯を取り出し、警察に電話を掛ける。 鼻血を流した男がゆっくりと立ち上がる。 そのことにジュリウスは気づいていない。 手の平を金髪の少年に向ける。 彼は“能力者”だ。 しかし、街中で能力を使うと至るところに設置されている“スキル・センサー”が反応してしまい、警察が来てしまう。 だから、女性を殺す時やジュリウスを始末するのにナイフを使用していたのだ。 だが、武器であるナイフは何処かに転がって見当たらない。 今少年を殺して自分だけ逃げれば警察に捕まらずに済む。 その為には能力を使って少年を始末するしかない。 「…死ね。」 手の平から緑色の光線が放たれる。 ジュリウスがそれに気がつき、振り返った時には完全に直撃コースだった。 避けることは不可能。 しかし、直撃する寸前で光線が一瞬にして消える。 いや“打ち消された”。 「えっ…?!」 「まさか立ち上がるなんてね。やっぱり腕が鈍ったのかな?」 男は汗を流し、焦りに焦る。 有り得ない現象が目の前で起こったからである。 「い、いいい一体何をした!?」 「何って別に…。」 知らないような口調で応える。 しかし、あれは絶対にこの少年が起こした現象だ。 「き、きききき貴様はまさか…Sランク能力者か!?」 それを聞いた少年は笑う。 「あははは!それはないな…だってオレEランクだぜぇ?」
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

159人が本棚に入れています
本棚に追加