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ちょっと面倒くさくなるジュリウスだったが、家にいるよりはいいと自分に言い聞かせる。
そして、少女と共に街中にあるゲームセンターに向かう。
*
一回100ギルのレースゲームを終え、少女を探す。
「あれ?どこに行った。」
歩きながらキョロキョロ辺りを見渡していると、同じリトクリーヴ学校指定の制服を着た茶髪の少女を発見した。
「そんな所で黙って何をしているんだエリナ。」
少女の名は“エリナ・スタムルク”。
彼女はポリエスから遠くない所にある村“ヤスパー”出身である。
今はリトクリーヴ高等学校の寮で一人暮らしをしている。
エリナが黙ってUFOキャッチャーを指差す。
そこには何種類かの可愛いらしいブルドックのぬいぐるみが景品として置いてある。
「これがどうかしたのか?」
嫌な予感がしながら尋ねる。
するとうつ向きながらやっと聞き取れるくらいの声で呟く。
「欲しい…。」
その言葉を聞いた瞬間、困った素振りを見せる。
金髪の髪をワサワサしながらエリナを横目で見る。
「そんなこと言ってもな…。」
「もう5000ギル使った。」
そんな大金をこんなぬいぐるみごときに使ったことに驚いてしまう。
そこまで欲しい物なのだろうか。
「はぁっ?5、5000ギルー?!」
黙ったままゆっくりうなずく。
恐る恐る気になることを聞く。
「まさか所持金全部使った訳じゃないよな?」
この言葉に聞いた瞬間、体がビクッと反応する。
やはりエリナは全所持金を使い果たしていたのだ。
「お前…そこまでして。」
「う~…だって~」
子供のようにむくれた顔をしながらケースの中にあるぬいぐるみを見つめる。
「可愛いんだもん…。」
まったく女心というものが理解できないジュリウスだった。
もう帰ろうとするがその場からエリナが動こうとしない。
さらには泣きそうになる。
困り果てたジュリウスが自分の財布から200ギルを支払い、挑戦する。
狙いは一番穴に近い黒いブルドックのぬいぐるみだ。
クレーンを上下左右に動かし、獲物に合わせる。
そして、ボタンを押す。
ゆっくりとクレーンが狙い通りのぬいぐるみに向かって降りていく。
見事に黒いブルドックをクレーンが掴む。
「よし!やっぱりオ……。」
ジュリウスが言葉失う。
何故なら、全く持ち上がることなく終わってしまったからである。
横からエリナが、細い目をしながらジュリウスに鋭いことを言う。
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