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「なんか元気ないね?」
「当たり前だろ……毎週見ているアニメ“ソートアート・オフライン”を見逃したんだぞ。」
それを聞いたエリナが呆れたようなため息を吐く。
アニメを見逃しただけで落ち込むなんて…。
男心が全く理解できないエリナだった。
歩道を歩いていると小学生くらいの男の子が横の店から飛び出してくる。
男の子は嬉しそうにオモチャの箱を手に、帰っていく。
「可愛い男の子だねー!」
「ここは新しく建てられたオモチャ屋か。」
店を見つめながら呟く。
その時ある物が目に止まり、足が止まる。
「あ、あれは…。」
エリナはそんなことには気がつかず歩き続ける。
ジュリウスが見た物、それは…。
合計で33,000ギルを支払ってやっと手に入れることができたあのブルドックのぬいぐるみだ。
ショックに陥る。
わざわざゲーム代まで使い、喧嘩を売ってきた男を脅してまで取ったぬいぐるみが店に売っているなんて。
さらに金額が目に入る。
税込で1,680ギルだ。
さらにショックだ。
肩がガクッと下がる。
「不幸だ。」
“後悔先に立たず”とはまさにこのことだと実感する。
あんなに苦労したのに…。
「どうしたのジュリウス?」
やっとジュリウスの状況に気がついた彼女が振り返り、首を傾げながら見ている。
さらに黒いブルドックのぬいぐるみの首も傾げているように見える。
ジュリウスは店にその憎たらしいぬいぐるみが売っていることを伝えることが出来ない。
こんなカッコ悪い結末を伝えることは絶対に出来ない。
「いやいや!何でもありませんよ!あはは…。」
両手と首を横に振りながらこのことを隠す。
一瞬不思議そうな顔でこちらを見つめるがジュリウスの言い訳が通用し、無事回避できた。
*
― 自分の部屋の鍵を開け、隣の部屋のエリナに「また明日な」と言い、部屋に入る。
玄関で靴を脱ぎ、ため息を吐きながらベッドに倒れる。
寮はちょっと豪華で広い。
ちゃんとジュリウスは掃除や整理している為、部屋は汚くない。
ジュリウスは風呂場で制服から黒いTシャツにグレーで白いラインが入ったジャージのズボンに着替える。
それもメーカー品“フーマ”のジャージだ。
上もあるのだが、寝る時以外は着用しない。
*
― さっそく買ったゲームをPF3に入れて始める。
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