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鬱蒼と生い茂る茂みのなかで、一人の少女は残弾を確認し、周囲にいる敵の数を確認する。
「残弾は一本……」
止む気配のない雨。湿度が高く、髪が衣服が張り付くが、少女は鬱陶しさを感じずザワッと動いた茂みを注視する。
「敵は5、いや、6……」
雨で視界が悪く、加えて生い茂る茂みのせいで的確な敵の位置が把握できない。
だが、少女は冷静で尚且つ落ち着いていた。
「こちらシルバーウルフ。本部、応答を」
左耳に装着したノイズだけが流れるインカムに耳を傾ける。
茂みのなかをゆっくりと悟られないように移動を始める。
再度、周囲を確認すると自分が囲まれていることに気づき、下されている命令を再確認する。
「敵を一掃する」
少女はグリップを強く握り、大きく息を吸い込み、静かに息を吐く。
「自決ように一発。できうる限り敵を減らす」
自分と敵との距離、障害物を確認し、少しでも長く生きることは考えず、ただ命令に忠実に従う。
生きることよりも命令に忠実に従う。そんな生き方しか分からない少女は茂みのなかを機敏に駆け回る。
茂みから茂みへ、木の影から木の影へ、敵の急所を狙い打つ。時に、倒れた敵の武器を使い、CPCで一掃する。
「最後一人、急所を外した……」
残弾が切れた敵の武器を投げ捨て、自決ように一発残していた銃口を額に押し付ける。
「申し訳ありません。勝利を願います」
少女は躊躇うことなく引き金を引いた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
様々な色が混ざり合い、見ているだけで乗り物酔いを起こしてしまうような錯覚に陥ってしまい、上も下も奥行きも、気づけることは自分が浮遊していることだけの空間。
「ここは何処だ!」
翼は見知らぬ場所に驚きの声を張り上げると、頭が割れる痛みに襲われ、悶絶して頭を抱えた。
「うるさいガキじゃな。ちっとは静にせんかい」
翼は声がした方に視線を向けると、三頭身サイズの脇にしか生えていない髪型で、(浮遊で)横になり、鼻をほじりながら尻をかいているおっさんがいた。
「あの、どちら様?」
「ん? ここの住人の神だけど?」
「そうなんですか。すみませんお邪魔……!? 神様!?」
驚きの声をあげると、再び頭が割れるような痛みに悶絶する。
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