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「主は学習せんか。学生じゃろ?」
「そうだよ! 学校! 遅刻!」
翼は証拠にもなく声を張り上げ、悶絶しながら頭を抱えた。
「ここ何処」
「お~主も来たか」
小さなおっさんは(浮遊で)横になったままで、様々色が混ざりあう空間に物怖じせず浮遊でしている少女を手招きする。
少女は無表情のまま何もない空間を蹴る要領で、小さなおっさんの前に近づく。
翼も少女を見習い真似をしようと行動に起こしたが、くるくると身体が回り続け、小さなおっさんの頭に踵落としを食らわせた。
「神様の頭を蹴る奴がいるか!」
「すみませ~ん」
くるくると回り続けたまま謝り、終いには少女に手を掴まれて助けられた。
「その、ありがと」
翼は謝辞を述べるも、少女の無機質な月のような瞳に見据えられ、視線をそらした。
「主ら、遅くなったがようこそ異空間へ。まぁ、こっちが一方的に引っ張り混んだんじゃが……」
「何が用こそだよおっさん! ここ何処だよ」
「人の話を聞かんかい。異空間と言ったじゃろ」
「だからって『ハイそうです』か何て言えるか!」
翼は頭が割れるような痛みに耐えて突っ込みも、耐えきれずに膝を抱えて頭を押さえた。
「き、君も何か言わなくて良いの? こんなところに連れ込まれて」
「何も」
表情を変えることなく首を横に振る少女の銀色の髪が、翼の顔の前を漂う。
「ほれ、こっちの主が落ち着いている。主も見習いたまえ」
「いや、絶対戸惑ってるって」
そうだよね? と、聞く感じで顔を覗き込む翼だったが、少女の表情は変わることはなかった。
「そうじゃ、主ら一つ伝えておきたいんじゃが、その、何じゃ……」
「今更何勿体振ってんだよ」
翼はこれ以上何があっても驚きもしないと言った表情で小さなおっさんを見据え、少女は何も言わずに見据えた。
「主ら、死んでるからな?」
「はい?」
「……」
小さなおっさんの言葉を理解するまで時間のかかった翼だったが、何度も頭のなかで反復して、その言葉の意味を理解して無言で小さなおっさんを殴った。
「今度は殴ったな!」
「当たり前だ。死後の世界は楽園だって、辺鄙なおっさんが居て、訳の分からないこんな空間が広がるわけないっての」
翼は両手を大きく広げ、小さなおっさんを嘲笑う態度をとって見せる。
少女は口を開くことなく翼を見据え、小さなおっさんは眉間にシワを寄せて腕を組む。
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