第1話

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「なら生き返らせてくれよ」  ぶっきらぼうな口調の翼を見据え、小さなおっさんは人差し指を突き立てる。 「一つだけ条件がある」  「命令?」 「そう命令! 拒否権はない」 「承知」  胡散臭さ満載の小さなおっさんに、少女はビシッと敬礼をする。 「で、条件って何?」  まだ信用しきっていない翼を横目に、小さなおっさんは両手を大きく広げる。 「この異空間は様々な時代、世界に繋がっているのじゃ! そこの住人であるワシは滅び行く世界をいくつも静観してきたのじゃ」 「いや、自分でどうにかできたんじゃないのか? 今見たくだらだらしてたんじゃないのか」 「しては……してました。だけど何でも神様が手を出して言い訳じゃないんじゃよ! だから主ら、消失しかけた魂を呼び寄せたのじゃ!」  憤怒の表情で弁解する小さなおっさんを適当にあしらい、翼は少女を見据える。  少女は何も言わず、翼と見つめあう。 「自己紹介してなかったけど、俺は峽(はざま)翼(つばさ)よろしく。君は?」  少女は小首をかしげ、顎に人差し指を当て考えるポーズを取る。 「おっさん、この子って名前を忘れてるとかないよな」 「お、おっさん!?」  おっさん呼ばわりをされ、小さくうなだれる姿を鬱陶しげに翼は再度同じ質問を問いかける。  だが、少女も同じ反応を返して名前を聞くことに苦戦を強いられる。 「死ぬ前に何て呼ばれてなの君? あるよねそれくらいは? そこから思い出せたりーー」 「『シルバーウルフ』そう呼ばれていた」 「ゲームのなかだよねそれ? 他には?」  髪をかきむしり苛立つ翼だったが、少女の反応に降参を示す大きな溜め息を吐いた。 「長くて呼びづらいから、そうだな……銀(ぎん)。銀にしよう。今日から君のことを銀って呼ばせてくれ。いいかな?」 「わかった。じゃあ、貴方は何と呼べば?」 「俺は普通に翼でいいよ」 「そう、よろしく翼」  握手を求める銀の手を、翼は躊躇いがちに握った。  一人蚊帳の外だった小さなおっさんは、わざとらしく咳払いをして存在をアピールする。 「主ら、神を無視するな。で、他に聞くことは無いのか?」  特にワシに。と付け足すおっさんを翼と銀は見据え、眉を八の字にする。  それに見かねて、小さなおっさんは顔を真っ赤に大声を張り上げた。 「ワシの名前も聞かんか主ら!」  おお、忘れてたと手を打つ翼。銀に限っては特にこれと言った反応を示さず、見据えた。
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