0人が本棚に入れています
本棚に追加
「ここまでワシをこけにするとは……本当に生き返らせないぞ!」
「じゃ、どうぞ」
雑な前降りにも関わらず、小さなおっさんは嬉々とした表情で腰に手を当て、ふんぞり返った態度を取る。
「聞いて驚くなワシの名はミトロン! 主らの願いを何でも聞き届けることができる!」
翼は雰囲気的な感じで適当な拍手を、銀も同じ拍手を真似する。
「では、主らの願いは生き返りたいと言うことで良いのじゃな?」
意思の疎通を図るため、翼と銀は目配せしてうなずきあう。
その姿に満足そうにうなずいたミトロンは、周囲の空間を見渡して人差し指で何かを引き寄せる。
翼はその動作を怪訝に思いながらも眺めると、空間の色と色が混じりあう境目から大きな円が姿を表し、ミトロンとの間に滑り込んだ。
「何だよこれ?」
「そう焦らせるな。もう少しで繋がる」
暫くすると湖に風景が写る要領で、どこかの小さな村の上空風景が写し出された。
ミトロンが親指と人指し指を左右に広げていくと徐々にクローズアップする。
木々に囲まれ、のどかな風景。自給自足をしているのか、様々な家畜と共に暮らす民族。
だが、翼はそこに住む住人たちを何度も目を擦り、瞬きを繰り返して凝視した。
「熊? それに犬、猫……コスプレイヤーの集まり?」
「いや、ここの住人たちじゃ」
「冗談にも限度があるだろ! じゃあ何か? あの蛇と蜥蜴が合わさったような生き物が家畜か!?」
翼は映像に近づき、蛇の身体に手足が付いてうねらせる生物を指差し、透けて写るミトロンに確認を取る。
「それは、野生の生き物じゃ」
「食べれる?」
「うむ、尻尾の肉は美味と聞く」
「食べることを考えるの? 銀、君って変わり者だね」
絶対に遭遇しないようにしよう。と決意する翼は救いを求める必要性のない風景を見据え直す。
「俺たちに救う必要ないだろ」
「今はな……」
意味深な言葉を残すミトロンだったが、陽気な口調に戻って翼たちを指差す。
「この世界を救ってきてくれ!」
「俺はパス。絶対必要ないから、ここにいる」
翼はミトロンに背を向け、ふわふわと浮遊を始める。
銀は表情をピクリとも動かさず翼とミトロンを見据え、翼の腕をつかんだ。
「生き返られなくなる」
「銀が行けば、銀が生き返られるよ」
「二人で行かないのなら無理じゃ」
追い討ちをかけるミトロンを鋭く睨み付け、銀の握っている手を軽く叩いて離すように促す。
最初のコメントを投稿しよう!