0人が本棚に入れています
本棚に追加
「そこを何とかしてくるのじゃ」
「ふざけるなよ! 銀も何か言ってやれよ!」
「吸い込まれる?」
「今の現状じゃなくて! 最悪助けれないかもしれないんだぞ!」
「あ~そこは大丈夫じゃ。ワシを信じろ」
素っ気なく、投げ槍な口調のミトロンを翼は鋭く睨み付け、大声を張り上げた。
「そんなの信用できるか! 銀!? 何処掴んでんだ?」
徐々に強くなる吸引する中、翼は平泳ぎの要領でミトロンと言い争っていたが、腰にまとわりつく感覚に声が裏返った。
「腰?」
「違う! それより下掴んでる! も少し自分で抗えよ!」
銀はしがみついたままノッシノシと翼を登り出す。
そんな中でも翼は必死に流れに抗うも、ミトロンのニヤリと浮かべた不適な笑みに戦慄が走った。
「おい、まさかだがミトロン」
皆まで言うなと片手で制するミトロンは、現在も翼をよじ登っている銀を見据えた。
「銀命令だ! 翼を押さえ込め」
「了解」
「了解じゃねえよ! ミトロンってめぇ覚えとけよ!」
映像の中に吸い込まれていく翼と銀を満足そうな笑顔で見送ったミトロンは、誰もいなくなった異空間でぼそりと呟いた。
「退屈しなさそうじゃの」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「貴方はまたですか」
一人悲しげな声音で上空を仰ぐ女性の目は憤怒の色を浮かべていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「うっ、うん~? 何処だここ?」
差し込む日差しに手で日差しを遮り、自分が仰向けで横たわっていることに気づいた。
芝の上で、青々とした木々が視界一杯に広がる。その背景に青い空も広がっていた。
翼は状態を起き上がらせ、辺りをキョロキョロと見渡す。
「って、銀がいないし……」
自分同様横たわっているのかと思っていた翼は、ガックリと肩を落として呆れる。
「ミトロンの奴、別々の場所に落としやがったな」
今頃怠惰に過ごしているであろうミトロンの姿を想像した翼だが、ひとつの疑問が脳内にを過った。
「あの時、俺の実態はどうなってたんだ?」
魂だけを呼び寄せたといっていたミトロンの言葉に、翼は自分が学校の学ランを着ていることに更なる疑問を浮かばせた。
「俺、あの時全裸だったのか!? 銀も……女だよな?」
そこにいた。など、すべてを自分の五感で認識していたのだと気づき、頭の中を整理しようと頭を抱えた。
最初のコメントを投稿しよう!