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さすがに徹也も不思議に思いちらりと父親を見て、驚いた。
父親は湯気で曇った鏡にリンスを塗り曇らないよう自ら加工したうえで、鏡の中の自分を一心不乱に凝視していたからだ。
鏡の中にはしがない一重瞼で眉毛の濃い禿げ頭の親父が映っているだけだが、父親は鏡から一瞬たりとも視線を外さない。
いつからお父さんはこんなにナルシストになったんだろう、久しく風呂を共にしなかった間に一体何が?徹也が呆気にとられていると前髪から滴り落ちた水滴が瞼の中に入った。
目を閉じて再び開けたとき、父親が見つめる鏡の中にさっきの若い男性客の後ろ姿が写り込んでいることに気付いた。そして、そのとなりに髪の長い華奢な背中が並んでいることも。
徹也は驚き、思わず振り向いてしまった。
夢でも見間違いでもなく、確かにそこには女の子がいた。
それも小さい女の子ではない。
どう見ても自分と同じくらいの年の女の子が。
徹也の視線に気付く様子もなく女の子は立ち上がり、さっきの若い男の背中をタオルで擦り始めた。
その身体は華奢ではあるけれど尻は丸くキュッと上を向いていて、膨らみはじめた乳房はすでに背中を擦る腕の動きに合わせて僅かに揺れる程度まで形作られていた。
徹也にだってわかるくらい、彼女の身体はもう女の形になっている。
何であの子、男風呂に入ってるんだろう?
恥ずかしくないんだろうか?
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