涙のお願い≪六話の続き≫

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高梨さんもそうなんでしょう? ずっとずっと好きだった人を……忘れる事なんて出来ないわよね? その気持ちが痛い程分かるから、何も言えないの。 「同情?」 月の瞳が、真っ直ぐと私の目を捉えてくる。 その顔には冷たさしかなくて、思わず心が震えてしまう。 ……私の事だけを思ってくれるのは、嬉しい。 けど他の人にも同じぐらい優しくしてあげて欲しい。 ……そう思うのは、私の単なる我儘なのかしら? 「同情じゃないわよ。同じ女性として、彼女の気持ちが分かるから」 そう言うと、月の目が優しくなる。 彼の手が私のおでこを撫でると、子供扱いされている気がした。
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