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ぴちょん…
濃い霧もやの中、水が何処からか滴り落ちる音が響く。
ぽちょん…
素足でひんやり冷たい道を歩く。
「ここはどこ?」
辺りを見回しても、濃い濃霧のせいで視界は霞んでよく見えない。
ただ一つ解るのは、ここは洞窟。
さっきから鍾乳石の様な物が目に付く。
ずんずんと歩き進めると、また同じ様な道が広がる。
「本当にここ、どこでしょう?」
自分の声と足音、雫の音しかしていないだけに不安が募る。
ぴたぴた…
ぽちゃん…
ぽちゃん…
心細さに震えながら、歩き続けていると…
「広い……。」
さっき立ち止まった所より遥かに天井は高く、一つのホールみたいな空間がそこにはあった。
そして真ん中に一匹の猫。
綺麗に整えられた銀髪の猫は一声にゃー、と鳴いた。
私は猫にゆっくり逃げられないように近付いた。
猫の側に行っても、猫は逃げない。
寧ろリラックスしているみたいな落ち着き方だ。
猫は目をゆっくり開いて、私を見た。
綺麗な翡翠色とも青葱色とも瑠璃色とも言えない何とも不思議な瞳だ。
その猫は突然、私に話した。
「お前がありす、か。
俺は銀ノ助だ。」
猫が喋った!?と、私は目を見張る。
猫はかっこ良いハスキーな声でクスリと笑った。どうやら、雄猫らしい。
「驚くのも無理は無い、か。」
そう言うと、猫はこっちを向いて軽く会釈したので私も慌てて返す。
「い、一体なんですか?」
猫はやはりな、と呟くと私の胸に飛び込んで来た。
そして、ゆっくりと話し始めた。
「お前に特別な能力が宿っている。」
意味がわからないと言うと、彼はまぁ黙れと話を続けた。
わかりやすく言えばこういう事。
私は母の血を継いでいるので、特別な能力を持っている。
例えば、念力で未来を予言するとか、物と会話が出来るとか…。
そういう能力が私は生まれつき備わっている、ということである。
その力を使って何かを手伝って欲しいと言う事らしい。
「私にそんな物があるんですか!?それに手伝いって?」
彼はまぁまぁ、落ち着けと苦笑しながら言葉を続けた。
何か、と言われても実を言うと俺も解らない。
しかし、私の能力は解っている。
お前の能力は
死体と話せる力だ。
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