第6話

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「洋子さん。 来週からちょっと仕事の帰り、 行きたいところがあるんだけど、 希を少しよけいにお願いしてもいい?」 こうなったら自分から売り込みに行くしかない。 ほとんど小さな仕事しかしてきてないから、 向こうからお声が掛からなくなってたんだ。 だけど、 あの頃のように、 何本も手持ちの仕事があって、 生き生きしてた頃の自分に戻りたい。 海翔と一晩過ごして、 そう、強く想った。 「いいよ? どうした?」 「ちょっと、あっちの方の仕事にもう少し重点を置きたいと想って、 何か書かせてもらえないか、 回って来たいと思って。」 「そうか。 そうね? やっと元の澪ちゃんに戻れそうね。 あの頃の澪ちゃん、 生き生きしてて、格好良かったもの。 こんなこといっちゃあれだけど、 今はただのおばさんみたいだからね… なんか疲れたおばさん。 そんなんじゃないもんね? 澪ちゃんは。」 ただのおばさん… そう見えてるんだ。 やってるんだけどな… 希を寝かした後、 ここで、何時間も。 あの頃と同じように。 やっぱり、社会の目というか、 評価というか、 そんなものが有ると無いとでは、 自分自身の内面も違ってるのかもしれない。 どんなにいい仕事をしても、 評価がなければ、 自己満足で終わること… そんな実感…
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