第6話

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海翔のためだとか、 自分のためだとか… そんなことを言ってる自体、 考え方は間違ってるんだ。 自分のためにだけど、 自分のためじゃない。 見てくれる人が評価するものだから。 「洋子さん… ご主人と一緒に旅行、 行かなくていいんですか? 希のために、 ぜんぜん行ってないですよね…? なんか、冷静になると、 すごく甘えちゃってる気がして…」 後部座席にはチャイルドシート。 ここまでしてもらっては、 さすがに悪い気がしてならない。 「私ね… 旦那と一緒に行くことだけだったの。 楽しいこと。 もちろん、 はじめは嬉しくて楽しかったのよ? しがない暇な主婦。 それしか知らないから。 だけどね… やっぱり子供、産んでれば良かったって想った頃には、 もう出来なくてね… 病院にも行ったし、 何年も治療したの。 だけど、 出来なかった。 そんなときに澪ちゃんに出逢って、 それからすぐに澪ちゃんもお子さんと別れて。 赤ちゃんが居ると聞いたら、 もう、 運命でしょ。 私しか出来ないと想ったのよ。 直感。 私にしか、澪ちゃんの手助けは出来ないと想った… お手伝い、させて? ほんの数年だけだから。 私たちの手が必要なのは。」 本当はそんなことを聞きたったんじゃない。 洋子さんは、 希を見てくれることが、 本当に幸せなのかってことだったんだ… だけど、 そんな風に言ってくれる洋子さんが、 母のように、 姉のように… つい、 安心できる存在になっているのも事実。
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