第6話

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「私にも旦那にも、 前のパートナーとの間には子供が居たのに、 出来ないっておかしいでしょ? 不妊症だなんて… だけど、 やっぱり、 相性とかってあるのかな。 結構キツいのよ。 不妊治療って。 いいって言われる病院には遠くても行ったし、 とりあえず待合いで待ってるときには妊婦さんに囲まれるし… ダメだったら、 めちゃくちゃ落ち込むし。 2年ぐらいかな。 諦めちゃった。 愛し合うって言うことが義務になっちゃって、 苦痛でしかなかったから。 羨ましいのよ。 あんなに欲しいと思ってた赤ちゃんを、 一人でも産んで育てようとしてる澪ちゃんが。 だから、 傍にいたいの。 いい?」 何も知らなかった。 洋子さんがおどけた顔で言うもんだから、 余計に苦しく感じる。 「助かります… これからも、是非… ありがとう、洋子さん。」 今までよりも、 重く、 心からの、 感謝。 「でもね? もう諦めたらラクになっちゃって。 だから、のんちゃんはうちの子みたいなものよ? 旦那だって、 たぶん、我が子にはこんなだったんだろうなあ。 って顔、見せてくれるし。 もしかしたら、 おじいちゃんの心境なのかも。」 ウフフ… と笑う。 重い空気を一瞬にして明るくできる洋子さんは、 きっと、 そういう天才なのだ。 だけど、 何かを抱えてる。 それが お子さんのことなのかなんなのか、 解らないけど。
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