第6話

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*** 「遙人。 去年のドラマ、 《うつくしのブルー》 コスモシアン賞らしいぞ? まあ、作品に対してだけど、今年は賞取りラッシュかもな。 もしかしたら授賞式に出るかもしれないから、 そのつもりで居ておいてくれ。」 事務所に顔を出すと、 社長がそう言った。 機嫌がいい。 賞という言葉は大好物らしい。 マンスリーでノミネートされてるとは聞いていたけど、 昨年の作品のことだ、 どうも、ピンとこない。 演技をしたと言うより、 何かを求めてたと言う感じだったろうか。 映画と違って、スペシャルドラマと言う枠の講評はなかなか届いてこない。 だけど、 あれは違ってた。 あの作品から急に仕事が増えたんだ。 切ない苦しい感じが、 実によく表現できてると… 皮肉なもんだな… 演技でもなんでもない。 あれはあのときの俺の心の中。 苦しい思いを抱えて、 とても仕事など手に着かないほど、 ぼろぼろで… それでも、 彼女が俺の仕事を見てくれたらと想って… 心からの叫びのような作品だった。 今となっては、 想い出したくないほど、 苦しい作品だ…
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