第6話

29/40
前へ
/40ページ
次へ
人をかき分けて… やっとたどり着いた澪の前。 逢いたくて… ずっと頭から離れなかった澪が、今、俺の前にいる。 だけど… もう彼女は人妻。 冷静に、 なんでもない顔をして… 「お久しぶりです。 先生…?」 俺を見上げる澪の瞳はどこか不安そうで、 潤んでて… どうしてそんな顔をする? 「遙人さん、 先生とお知り合いですか?」 そうか。 アレ? 何でこの場にいるんだ? 「あ、 はい。 昔、作品に出させて貰ったことがあって。 どうして先生がここに?」 澪は口を開かない。 「あれ? 遙人さん、知らなかったんですか? 可奈子先生の作品ですよ? うつくしのブルーは。」 可奈子先生? 誰だそれ。 「ああ、ごめんなさい。 名前を変えたの。 結婚して、心機一転。 ごめんなさい。 連絡が行き届いていなかったのですね?」 髪の毛を短くして、 綺麗にメイクして… 体に纏わりつけたような薄い布の短いスカートなんか履いて… 全く別人の澪が、 そう言った… やっぱりそうだったんだ。 澪の作品じゃないかってずっと想ってたんだ… 他人行儀の言葉使いをされても、 それがなんだか、 嬉しかった。 「私はこのあたりで…」 帰ろうとする。 今来たばかりなのに。 幸せならそれでいい。 そんな幸せな様子を見て、 きっぱりと忘れられたら、 それでいいと想ったんだ… 「そんな事言わないでくださいよ。 まだ、 誰とも挨拶してないじゃないですか。」 俺が言おうとしたことを、 スタッフが言ってくれて、 グッジョブ!
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加