第6話

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3時頃、 海翔を連れて私の働いてるお花屋さんに向かう。 両親は一緒に出て、 バス停で別れた。 「今度帰るときには、 絶対にうちに連れてきなさいよ?」 お母さんは何度もそう言ってた。 自分の作った物を食べさせたいみたい。 ずっと何年もそうしてきたし、 海翔も食べたいって言ってたから。 洋子さんが朝、ベビーカーを持って来てくれたから、 希を乗せて、お散歩ついでに。 海翔はこのまま帰るから、ランドセルを背負ってる。 またちょっと離れるね… 海翔が言った。 大丈夫。 またすぐに会えるわ。 ありきたりな言葉。 お花屋さんで海翔にお花を選んでもらって、 お義母さんのいる病院に向かう。 ちゃんとお礼を言っておかないと。 おかげさまで会えましたって。 「やっぱり違うわね。 海翔の顔。 明るくなってる。 ゴメンね… 我慢させてたの、気がつかなくて。 これ、海翔が選んでくれたの?」 お花に顔を近づけて、 香りを楽しんでるよう… でも、すぐにむせ込んで咳が止まらなくなって… 苦しいんだろう。 でも、そんな顔は見せない。 いつか、 分かれた元夫が言ってたな… 亡くなったお義父さんがどんなに苦労してあの会社を作ったか。 それをどんなに必死でお義母さんが守ってきたか。 私が、 ちゃんと心で受け止めていたら、 こんなに私たちの関係が拗れることはなかったのかもしれない。 そんなことが、 海翔に我慢をさせて解るなんて… ひどい母親。
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