第6話

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「はじめは好奇心。 で、 作品を描き上げたら別れるつもりだったのよ? はじめから決めてたの。 大変そうでしょ? 人気俳優さんと付き合うって言うのは。 おかげでこんな賞を取れる作品になった。 感謝してるわ。 付き合ってると言うより、 仕事の一貫ね? 遙人くんと同じ。 噂を立てられるようなお付き合いじゃなかったのよ。」 そうよ。 遙人がそう言うんだから、そうなの。 はじめから何も始まってなかったの… 私だけが一方的に、 人生を賭けて。 そんな事、 絶対に知られちゃダメ。 知られたら、スキャンダルだから。 隠し子っていう。 そのことは何度も考えて、 こういう結論を自分で出したんだから、 もう納得してる。 だけど… 顔を見たら愛しくて、 心が揺れた自分が。 バカみたい。 「私、 夫に子供を見ててもらってるので、 もう帰りますね? 久しぶりに会えて、 嬉しかったわ。 これからもご活躍、 期待してます。」 二人に言う 遙人の顔は見なかった。 はっきりと赤の他人だと言われたんだ。 もう悲しいことはない。 もう思い悩むことはない。 そうさせたのは私だけど。 店を出て、 大きめの通りに出る。 遙人はあの時のように追ってこない。 ふっ… と、こみ上げた笑い。 同時に目頭が熱くなる。 手を挙げてタクシーを停めて… 乗り込んだタクシーは凄く寒かった。 冷房が利きすぎてる…
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