第6話

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「海翔。 これを持ってなさい。」 駅のホーム。 土曜日だからそんなに人は多くない。 渡したのは御守り袋。 希が産まれるときに洋子さんがあちこちで貰ってきてくれたもののひとつ。 「この中にね? ママの部屋の鍵が入ってるから。 それと、少しだけどお金。」 千円札を数枚と合い鍵を入れてる。 「マンションの入り口の鍵を差すところに、 鍵を差して回したら、自動ドアが開くから。 部屋の鍵もこれで開けられる。 どうしても辛いことがあったら、 いつでも来なさい。 ママが仕事で居ないときでも、いつでも入って待ってて? ママはいつでも海翔の味方だからね。」 うん… それ以上、何も言わなかった。 大事そうに御守りをランドセルにしまった… 私は、駅の構内で、 ベビーカーをコインロッカーに入れて、スリングで希を抱っこしてる。 ベビーカーって、 結構邪魔になるの。 電車の中。 ベンチに座ると、海翔は私の前に立ち、 希をのぞき込んでる。 小さな手を握って、 「また来るからね。 僕のこと、忘れないでね?」 って、 笑いかけた…
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