第6話

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切符の買い方も教えた。 これで逃げ場所を作ってあげることができた。 きっと海翔のこと、 我慢して、 顔には出さないで今まで暮らしてたんだろう。 私に会いたいって言えずに。 「1人で来れそう? 今度の時、 1人で来てみる?」 「駅で降りてからがよく解らないよ… お花屋さんとか病院とか行ったから。」 そうね… もしもの時に困らないようにと想ったんだけど、 「ゴメンゴメン。 じゃあ、今度の時にも学校に迎えに行くね? 楽しみね? 今度はおばあちゃんのおうちでお泊まりだわ。」 わざと明るく話す。 別れが辛くないように。 駅を出て手をつないで歩いた。 海翔が住む家に向かって。 もうすぐ5時。 まだ暗くはならないけど、 心配で待ってる人が居ると想うと、 5時という時間はちょうどいい。 「のんちゃん…?」 この角を曲がると家が見えるという交差点。 ここでお別れ。 しゃがんで希の顔を見せる。 眠っちゃった… いいゆりかごになったのね。 「のんちゃんはいつか、 ママとパパと。 暮らせるようになったらいいね。」 希の頭を撫でて、 「寂しいだけじゃないんだよ? お父さんは休みの日にはキャッチボールとかしてくれるし、 遊びにだって連れて行ってくれる。 お母さんはそれをじっと見ててくれるし、 よくできたねってほめてくれる。 だから、心配しないで? ママも、幸せになったらいいんだよ? 大好きな人と。」 じゃあね? って、 手を振って、 振り向きながら1人で角を曲がっていった… じゃあね…またね? 海翔は全部解ってるんだ。 今の私の心の中…
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