第2話 動き出す

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結局私はジェイの下で働くことになった。 と言うか、お願いをした。 働かせて下さい。 何でもします。と。 ジェイが運んでくれたあの部屋に住み、朝から夜までジェイと一緒だ。 仕事は… よくわからない。 というのは良くない言い方だけど、 国賓までにない海外の要人、 言ってみればビジネスで訪れる超VIPの身辺警護や身の回りのお手伝いだという。 国からの要請で動いている、言わば国の末端組織。 じゃあ、ジェイの言うボスって… イヤイヤそんなわけないでしょ… ヘンなことは考えないようにしよう。 私はまだ特に何も任されてはいない。 ただ、会社にいて電話番とコピー取り、そしてジェイが出かけるときについて行くだけ。 「レイが完璧な英語を身につけたら、仕事を任せるよ。 それまでは、私の秘書見習いだ。 悔しいか?」 車の中でそう聞く。 「ええ。とっても。 早くジェイを早口で追い込めたいものです。」 はは… と笑う。 私の隣のジェイの顔をちらっと見る。 相変わらず整った顔。 太い首。 逞しい上腕。 ふた月。 ずっと一緒にいるのに、彼女らしき人との接触はない。 と思う。 夜中にのどが渇いてキッチンに行くと、ダイニングのテーブルでPCを開いて仕事をしているジェイが居るし、 朝も私より早くテーブルについて新聞を読んでいる。 仕事が恋人? それとも、 もしかして…あっち? イヤイヤ。 ヘンなことは考えないようにしよう。 この奇妙な共同生活も気に入っている。 大きなお屋敷に庭にはプール。 メイドのアンジーは気だてがいい優しい人で、話もよくする。 お料理も美味しいし。 あとは私が頑張らないとだ。 もう要らないと言われないために。
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