16人が本棚に入れています
本棚に追加
朝…
指輪は外れた。
オリーブオイルを付けて回しながら、
ちょっと痛かったけど、でも、スルリと取れた。
昨夜、オリバーさんが言ってた。
「万が一、オリーブ油で滑って流してしまったらいけないから、
排水口にタオルでもかけて洗いなさい。」
と。
案の定、オリーブオイルで滑って指からスルリとこぼれ落ちて、ヒヤッとした。
流してしまったらタイヘン…
アーレフにも言い訳が立たないし、
オリバーさんの仕事の邪魔をしてしまうことになりかねないのだから。
私が足を引っ張っては、
ジェイのために良いことはない。
そう。
私は…
ジェイの恋人。
アーレフは、幻想の中で私に接しているだけ。
私はただのポイント。
集めたら、何かいいことがあるちょっとしたポイントにすぎない。
時が経てばすぐに飽きて、
忘れられる。
アーレフほどの人だもの。
そのくらいにしか思ってはいないのだ。
頭の片隅に、
あのアーレフの揺れる瞳を感じながら、
そう思う。
「おはようございます。
どうですか?」
オリバーさんから電話がかかる。
指輪のことを言っているんだろう。
「おはようございます。
はい、外れました。
昨夜はすみませんでした。
もう大丈夫です。」
オリバーさんが居てくれて良かった。
いつも冷静で、
いつも同じスタンスで。
ちょっと怖いけど、味方で居てくれることは確かだ。
「それでは、9時に部屋の前で。」
ちょっと鼻声。
今、起きたのかな…
まだ1時間以上ある。
ゆっくりシャワーを浴びて、メイクが出来る。
ジェイに会うために、
少し念入りにキレイにしようか…
最初のコメントを投稿しよう!