第4話 心配 #2

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朝… 昨日のように部屋で朝食を一緒に済ませて、 出掛ける準備をなさっている間に、アーレフの荷物を片付けてバッグに詰めた。 「じゃあ、行ってくるよ。」 頬にキスをして、部屋を出て行かれた。 それを怪訝な表情で、フィリップさんが見ていたのに、 私は気付いた。 「行ってらっしゃいませ。」 声をかけて、 フィリップさんにアーレフの荷物を渡すと、 「恐れ入ります。」 と丁寧に頭を下げて、チラッと私の顔を見てアーレフの後を追って出て行かれた。 昨日は、急いで荷物を詰め込んで追いかけて行かれてたから、 私がするべきことだったのだと反省したのだ。 でも、あの人… 苦手。 怖い。 数分後、 オリバーさんから電話がかかる。 お昼頃、迎えに来るから、 それまでゆっくりしていなさい。と。 まだ8時。 3時間は眠れる。 眠れなかった。ゆうべ。 アーレフは優しかった…とても。 はじめの時は、ただ… 言葉もなく、弄ばれた。 魂を隠していたのは、私だけじゃなかったんだ。 きっと、アーレフも同じように… そのことしか記憶がない。 でも、最後の夜だけは… 確か、 イヤじゃないか? と聞いてくれたのを、おぼろげながら覚えてる。 はい… とか、 そんな言葉しか発することは出来なかったと思う。 イヤだなんて言える訳ないし、 ましてや拒むことは許されないと知っていたから。 ジェイを守るために。 独りで生きてきたジェイが生きるためにそうしなきゃいけなかったのだと感じたから。 それなのに、 私は…アーレフの心ごと受け入れた。 それが私が出来る最大の誠意だと思ったから。 優しいアーレフ… そして、 私の帰りを苦しみながら待っていてくれるジェイ… どちらも私が、 苦しめてる。 優しく肩を抱いて、眠ったアーレフ… 私は…いろんなことを考えて、眠れなかった。 きっと、 アーレフも、熟睡していないと思う。 私が寝返りをうつ度に、体制を変えて、抱き締めなおしてくれていたから。
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