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「いいえ?
全部、日本の人が好きなものです。
私とご一緒の時にはいつもすごいお料理ばかりなので、
そんな庶民的な食べ物を召し上がられるのかと思って、
すこし、驚いています。」
ハハッっと笑って、
「いつか街を一緒に歩いて、
ラーメンやうどんや、
たこ焼きの店に入れるようになるといいな。
夢だよ。
そんな自由な日が来るのが。」
顔は笑ってるけど、
寂しげな表情。
無理だと解ってるんだ。
一緒に街を歩くなんて事は、絶対にないって…
「ええ。
そうですね。
楽しいでしょうね…」
そう返事を返したが、
そんなことを夢だというアーレフが、
切なくて。
無言になった。
「これはなんの味かな?
すごく優しい味。」
白身のお魚で出汁を取ったお吸い物。
「お魚と、ミツバ、それにゆず。
日本の食材です。
お寿司と合うの。」
話を変えようとしてくれてることがすごくよく解る。
きっとかなわない事を、夢だと言ってしまったのを、
後悔してるみたいに。
ゆっくりと過ぎてる時間も、
やっぱり止まっていないんだ。
やがて、二人で過ごす時間も終わりに近付く。
夕方になってオリバーさんとフィリップさんが帰ってきた。
もう明日には帰るんだ。
「ただいま戻りました。
留守をして申し訳ありませんでした。」
それだけ言うと、
オリバーさんは私の顔すら見ないで、
自分の部屋に入っていったんだ。
もう、明日、
帰るんだね…
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