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オリバーさんは何も言わないで、
部屋まで案内してくれた。
私が涙を我慢してるから、きっと何も言わないで居てくれたんだ。
マンションの最上階だった。
摩天楼のど真ん中。
辺りは同じような高さのビルで埋め尽くされていて、
ジェイの家の自然がたっぷりの環境とは大違い。
窓も風を取り込むスリットの小さいものしか開かなくて、
あとは填めごろしの大きなガラス。
でも、
ジェイの家とぜんぜん環境が違う方がずっといい。
思い出してしまうから。
「この部屋でもいいし、隣の部屋でもいい。
私はリビングの隣の部屋を使ってるから。」
そう言って、並んだ部屋を見せてくれた。
どちらにも使わないであろう物が紙袋に入れて隅の方においてあるだけ。
私はバスルームの正面の部屋に置かせてもらうことにした。
おいてある荷物をもう一つの空いてる部屋に移動して、
ちょっと出掛けよう。
と。
ずっと留守にしてたから、飲み物も何もないし、
食事に行こうと言うのだ。
そんなことを言うオリバーさんの顔は、
いつもと変わらない、
少し怖い顔。
怒ってるんじゃないのは知ってる。
ずっとそうだから。
でも、
私が初めてアーレフのお相手をしたときに見せてくれた優しい顔もできるのに、
どうしてこんな怖い顔で居るんだろうか…
理由は聞かないけど。
きっと私が考え込まないように、
外に連れ出してくれようとしているんだ。
それがわかって、
「はい。」
と、荷物だけを運んで、
また車に乗った。
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