第8話 そして… #3

3/5
前へ
/21ページ
次へ
あの時のことはもう話題に出さないでくれ。 過去のことだ。 それに、 あんな素人にやられるなんて、 情けないんだ… 「この個展が終わったらと思ってる。 レイももうすっかり元通りだ。 最近じゃ、怖いくらいだよ。」 そう…なのか? あの、泣き虫で弱々しいレイが? まあ、 すべてをさらけ出してるっていうことだな。 「奇遇だな。 私も彼女と結婚することにしたんだ。」 キャシーに視線をやる。 もしかしたらキャシーの中にレイを探したのかもしれない。 確かに最初はそうだった。 レイと離れてしまうこと。 その上、歩けないかもしれないと言う恐怖で、 生きる希望は全くなかった。 どうしてあの男は私に致命傷を与えなかったのかとすら考えたんだ。 そうしたらケイトがいる世界にいける。 レイとケイトがだぶってしまってた俺には、 それが一番しあわせなのだと、 考えてた。 だけど、 キャシーは毎日俺を連れだした。 リハビリにも行こうとしない俺を、毎日車椅子で外に連れ出して、 怒ったり泣いたり。 俺のことで泣いてるのかと思ったら、 自分がフラれたときのことを言いながら泣いてたりして… 無茶苦茶だな。 でも、 きっと。 みんなそうなんだって思ったら、 なんか、 レイに気持ちを伝えられなくて、 生きていけないなんてバカみたいだと… そう感じたんだ。 キャシーのおかげ。 気がついたら、 キャシーが喜ぶ顔が見たくて頑張ってた。 そして、 何とか歩けるようになってたんだ。 魔法が掛かった瞬間。 レイにも似てる。 ケイトにも。 そんな彼女と、 生きていきたいと、 心から思った…
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加