第9話 やっと。

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「ジェイ。 まだなの?」 レイが車の中で叫ぶ。 大きな荷物を何個も車の中に運びながら俺は、 「こんなにたくさん、 どうするんだよ…」 レイはちゃっかり助手席に座ってる。 だって… おなかの中には俺たちのベイビーが居るんだから。 あの日。 オリバーがギャラリーに訪ねてきてくれた日。 レイはやっと背負っていた重い荷物を降ろしたようだった。 抱えきれないほどの重い物を降ろしたレイの背中には、 きれいな大きな羽根が生えてるようだった… 俺の腕の中で、 何度も震えながら、その綺麗な羽根を大きく広げたように見えた。 その時だという。 そんなの判るのかな… あの時にできたベイビーだというんだ。 いつ出来たなんて、そんなのはいつでもいい。 大事に大事に。 そしてもうすぐ産まれる。 まだひと月は先だけど。 レイの個展は成功だった。 と言っても、成功させるために祖母ちゃんの友人のあの人が、あちこちに声を掛けてたのを知ってる。 ギャラリーで話してるのを聞いたんだ。 『あの人から声が掛かるとおおよそ間違いはない。 足を運んでもそれだけの収穫があるからね。』 と。 その専門の雑誌や新聞の記者たちがレイの写真と作品の記事を載せたことも、 あちこちから問い合わせが来たきっかけになってる。 だからもうレイは売れっ子。 制作してもすぐに売れる。 つわりの時にもずっと部屋にこもって制作してた。 待たせちゃ悪いからって言って。
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