第9話 やっと。

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「もうすっかりいいそうだ。 あちらの警察で働いてるらしい。 デスクワークだけど、 アイツは元々警察官だからな。」 そうだ。 元々警察官なのだ。 あの仕事に足を踏み入れなければ、 きっとこんな目になんか遭っていなかったはず。 本当に災難だった。 俺がちゃんと納得させていなかったからなのだ。 何度、そう悔いたことか。 だけど、オリバーはあの男になんの損害賠償の請求もしなかったと聞いた。 レイを守りたかったんだろう。 刺された直後から、 これは事故だと、何度も訴えていたのを知ってるから。 「そうなの… 良かった。 本当はすごく優しい人なのに、 あの仕事をしてたから、 表情を顔に出さないで、いつもしかめっ面をして。 あ、そうそう。 彼女。 キャサリンていうんだって。 ケイトと同じ。 ケイトも正式名はキャサリン。 運命の人に出会えたのね。 本当によかった。」 あの日から二人の話はほとんどしてない。 個展のあと忙しかったのと、 その後の妊娠…と、 何かと、意識が自分たちに向いてたから。 それに、オリバーからなんの連絡もなかったし、 俺から電話をしても、 すっかり良くなったら、式を挙げる。 その時には連絡をするから。 と言うだけで、 相変わらず、 フレンドリーの欠片もない言葉。 照れてんのか? そんな感じだ。 あの時には、結構、鎧が取れた感じだったのに。 まあ。 ある日突然なんて、 無理だよな。 あいつの気持ちは知ってるし。
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