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『尾張むすめ』
それは他の品種と比べ蛋白質含有率が高く、非常に濃厚な味わいが特徴で、煮炊きを司る世の女将衆の間でも人気の大豆である。
だがしかし、豆腐屋に言わせると、
「大変扱いづらい豆」
豆腐の原料である豆乳を作る際、その濃厚さが仇となり十中八九釜の底で焦げ付いてしまうのだ。
さて、そんな扱いづらい豆を敢えて選択する男。
石臼にて丁寧に豆を擂り潰し、続いてそのどろり濃厚を釜に注いで炭火に掛ける。
薪を使用した直火ではなく、着火後は炎が出ない炭火を使用するのが男のやり方であった。
焦がさないよう木のへらでかき混ぜつつ、屈んで火加減の確認をしつつ。
手間と暇と多少の頭を使って作られる男の豆腐。
曰く、旨いもんが食いたい。
男の信念である。
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