第3話

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まだ時間が早いからなのか 店内には人が少なく、 早々に注文の品が目の前に置かれた。 「カシス・オレンジです」 田原さんの前には すでに何かの水割りらしき飲み物が置かれていて、 彼がそれを手にした。 「まずは、乾杯」 自分も面倒げにグラスを手に持つ。 ――チン、 とガラス同士が美しく共鳴した。  皮肉にも、 その所有者達は決して仲良くないけど。 一瞬だけ視線を彼の方へと注ぎ、 カクテルを飲むふりをして舌だけをつけた。 酔ったりしたら大変。 「何かつまむ?」 「いいえ、お構いなく」 ここでようやく田原さんの方を見て 宣戦布告の微笑みをして見せた。
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