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腹ごしらえも済んだ所で 縄張りの見回りに向かう。
自慢じゃないが この辺り一帯は俺様のもの。
彼処に見えるデカイ城だって俺様の庭みたいなモノだ。
[兄貴~っ]
屋根伝いに歩いていると下の方から声がする。
トンッと少し低い壁に降りるとそれを見上げる様にして、【ちぎれ】が駆け寄ってきた。
【ちぎれ】は、白地に黒ブチの尾曲だ。 片方の耳が欠けている事から この辺では【黒ブチのちぎれ】で通っている。
[おうっ。変わった事はナイか?]
元々、この辺りのシマは【ちぎれ】の縄張りだったから、俺様が掌握した後も管理はコイツにまかせていた。
[それが…その~…]
珍しくヤツにしては 歯切れが悪い。
俺様が、【ちぎれ】の前にストンと降りるとヤツはすまなそうに耳を後ろに倒して姿勢を低くする。
[すまねぇっ兄貴…最近、壬生寺に住み着いたキジトラにシマを荒らされて…]
良く見ると、【ちぎれ】の身体には そこかしこに生々しい傷痕があった。
恐らく、そのキジトラにヤられたのだろう。
[なんで、もっと早く知らせなかった?]
【ちぎれ】は、決して喧嘩が強い訳じゃない。
この辺は、田畑が多く、のんびりしているため ここを縄張りにしようなんて物好きは先ず居なかったのだが、
【ちぎれ】の穏和な性格と面倒見が良いことで、女猫達が増え、
まぁ…それを狙ったモテない輩がここにちょっかいを出すようになってはいた。
そんな事もあって、この辺を俺様の縄張りにする事で、最近ではここにちょっかいを出そうなんて トチ狂ったヤツは居なくなって居たのだが…
[よそ者か?]
俺様の問いかけに、【ちぎれ】は、小さく頷いた。
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