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「……で、光秀よ」
光が収まり視界が戻ると、燃え盛る本能寺は消えていた。炎が移るとは思えない石壁、しかしそれには石の繋ぎ目がない。壁の一面には深緑の巨大な板がはめ込んであり、部屋には奇妙な形をした小さな机と椅子が並んでいた。
しかし目を開いた光秀が驚いたのは、瀕死であったはずの信長の姿であった。
「信長公、そのお姿は……!?」
老いたはずの体は、光秀も知らない若武者の姿に戻っている。着ている物も、南蛮由来であろう黒服に変わっている。それどころか、光秀自身も元服した青い頃に、そして黒服に変化していた。
「まさか私達は、揃って死んでしまったのでしょうか」
「分からぬ。だが、未知なる何かに遭遇しているのは確かだろう」
信長は辺りを見回すと、若返った顔を綻ばせる。危険を省みず、困難を楽しむその表情。それは光秀に、過去を強く思い出させた。
「信長公……」
「今は我の首を取るより、未知を探るが先だろう。来い、光秀! ここが地獄か天国か、我が見定めてやろうではないか」
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