プロローグ 学乱の幕開け

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   先程まで殺し合っていたはずの相手、それを全く気にかけず主君として振る舞う信長。 「……お供します」  光秀は、不思議と信長に頭を垂れていた。  よくよく調べてみると、この部屋は信じられない技術があちこちに存在していた。机や椅子一つにしてもそうだ。足が光沢のある金属で出来ている。さぞ重いだろうと光秀が手をかけたら、羽のように軽いのだ。  信長は、硝子の窓に目を奪われる。自らの腕ほどの長さのある大きさの硝子を、惜しみなく一面に貼る発想。中の様子が丸見えのため防御には向かないし、槍でつつけばすぐ破られる危険もある。 「本能寺再建の際、この窓を設置したいのう」  だが、革新的な発想を好むのが信長という人間。どうやってここまで大きな硝子を作らせようかと、策を巡らせていた。 「信長公、ここはどこかの城のようですね。南蛮風の門が見えます」 「しかし庭に風情がないのう。土ばかりで、草一つ生えておらんわ」  窓の外に見えるのは、広い庭。工事中なのか丸い白線が大きく引いてあり、隅の方には漁業用なのか、巨大な網が二つ置いてある。  
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